世界の10%の人々のために、デザイナーはデザインしているという事実。

WEB制作会社にて、「サイト改善を行うことで、ユーザーがタスクをスムーズにこなして、お客様の売り上げが上がることが、会社もクライアントもハッピー」という考えのもと、WEB/UI/UXデザイナーとして働いていて、少し違和感を感じていました。

もちろん、売り上げが上がって利益を出すことは自社もクライアントも存続していくために、必ず必要です。しかし例えば、「オプションをもっと選んでもらいたいから、施策を考えてほしい」といったクライアントの要望は、クライアントを幸せにするけれど、ユーザーのことは幸せにするのだろうか。

テック最高、テックは世界を救えると思っていた

私は海外テックの日本展開をやっていたこともあり、テック至上主義でした。海外の最新ツールを見つけては、やっぱり海外は違うな。最先端だなと関心し、IT企業で働いていました。けれどIT企業(ベンチャー)の行き着く先は結局「売り上げを上げて、会社を大きくする」ために、各々が最先端の技術を日々追って行かないといけないのです。もちろん、最新技術を追っていくのが楽しい、やりがいを感じるという方もいるので、否定はしません。ただ、私のビジョンとは合わないなと実感して、悩むようになりました。

先進国のデザイナーは世界の10%の人口のためにデザインしている

先進国のデザイナーは世界人口の10%の先進国の人々のための商品やサービスをデザインしており、新興国の90%のためにデザインをしている人が少ないと教えてくれたのが、シンシア・スミス著の「世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある」 (原題:Design for the other 90%)

世界の10%というのは、世界の先進国です。なので、日本になると世界の1%でしょうか。日本のIT業界で日々、トレンドを追ってデザインしている私たちは1%の裕福な人のために必死に働いているのです。

最新技術など不要な、本当のデザイン

上述の本では、新興国や災害後の地域で行われている「デザイン」の実例を紹介してくれている本です。その中でも印象的であったのが、ポット・イン・ポットというナイジェリアで発明された食材保管用のポットです。ナイジェリアは暑いのに、ほとんどの家で電気が通っておらず、食材を保管する方法がありません。そのため、農村部では食材を収穫しても、市場へ持っていくまでに腐ってしまい、貧困化が進んでいます。

そこで、食材を保管するために発明されたのが「ポット・イン・ポット」です。ポット(壺)の中に小さいポット(壺)が入っており、ポット同士の隙間に砂を入れ、水を注入します。砂の水分が外側の壺からゆっくりと蒸発するにつれ、熱も取り去ってくれ、内部が冷やされて農産物の腐敗が防止できるという仕組みです。

最新技術も、電気さえも不要な画期的な「デザイン」です。ポット・イン・ポットのおかげで、農村部の人々は野菜を保管でき、かつ新鮮なまま市場へ持っていけるので収入へと繋がりました。

ポットインポットについてさらに気になる方はこちらをご覧ください。

簡単な最新技術を入れた方が早い?

上記例を見ていて、「村にソーラーパネルを設置して電気を発電すればいいではないか。」という意見もあるかと思います。ただ、新興国で必要なのは「彼らの収入で購入できるか」「誰でも扱えるか」「壊れてもすぐ修理できるか」なのです。ソーラーパネルは、農村部の方の収入では到底購入できません。電線を引くなどの作業は簡単ではありません。壊れても資材をすぐ調達できません。先進国で生きているとつい「最新技術」に頼ってしまいがちですが、このような国では不要です。

「世界を変えるデザイン」が教えてくれたこと

中学校の頃から、大人になったら世界中の人々、全員を豊かにできる仕事がしたいと考えていました。豊かというのは裕福ではありません。衣食住が最低限守られ、子供たちが教育を受けられるという状態です。社会人になってインフラ企業で新興国のプロジェクトも経験しましたが、上から指示をするマネジメント職で、これは違うと感じ転職を繰り返し、今WEB業界のデザイナーをしています。

この本は、「デザイン」の可能性を私に教えてくれました。WEB/UI/UXデザイナーなので、工学的なデザインはできませんが、デザイナーになったからこそこの本と出会い、今後どういう勉強をしたら、自分が中学生の頃からやりたかったことが叶えられるのかのヒントになったと思っています。もし今、WEB業界で働いていて、トレンドを追い続けて疲れている方がいれば、ぜひこの本をおすすめしたいです。世界の大部分を救うのは「最新テック」ではなく、「安く、持続的に使える、発明」なのです。

#一人旅

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